ライトノベル All You Need Is Kill レビュー

タイトル All You Need Is Kill
著者 桜坂洋
イラスト 安倍吉俊
出版 スーパーダッシュ
発売日 2004年12月


執筆者:jade 評価:
この物語はいわゆるループ物。初年兵キリヤ・ケイジが戦場で戦死した瞬間から時のループに巻き込まれ、幾度となく出撃と戦死を繰り返すことになります。
何度かループを経験することによって、死がループのトリガーになっていることを察したケイジはループから抜け出すために訓練と実践を繰り返すことによって、戦場を生き抜く実力を身に付けることを決意するのですが、戦況は絶望的でたった一人では戦況を覆すことはほぼ不可能。それにもかかわらず、ケイジは生き残るために最善の策を模索し続け、ついには戦況を一人で打破できる最強の戦士へと成長し、戦女神リタ・ヴラタスキという最高のパートナーを得ることになります。そして、物語はこのままハッピーエンドを迎えると思いきや、ここでもうひと波乱起こり、物語は意外な結末を迎えることになります。

いきなり戦場から始まり、最初の十数ページで1度目のループが発動するため、物語の雰囲気に馴染む暇もなく物語に引き込まれましたね。数十ページに渡り長々と1度のループを描いたかと思えば、次のループではわずか数行でケイジの人生を終わらせることもあるなど緩急を上手く使い分けており、物語の構成は極めて巧妙と言えるでしょう。また、作中で度々ケイジは汚い言葉遣いをするのですが、それに引きずられることなく、最後まで地の文が乱れなかったのも好印象ですね。

この物語の最大の見所は何といってもクライマックスのどんでん返し。たとえ、ラストを捻らず素直にハッピーエンドに持っていったとしても、そこに至るまでのケイジの孤独な戦いが綿密に描かれているため、ある種の達成感を伴った十分感動できる物語へ仕上がったでしょう。しかしながらそれで良しとせず、さらに救いのない方向へと持っていき、物語を盛り上げた徹底ぶりには脱帽ですね。ラストのインパクトが強すぎるため、SFというよりもラブストーリー(それも悲恋物)を読んだあとのようなほろ苦い感覚がいつまでも残りました。
著者のデビュー作である「よくわかる現代魔法」を読んだ時には、正直これほどの作品を書ける人だとは夢にも思いませんでしたよ(爆

ループを描いたSF物としてはこれといった欠点が見当たらない秀逸な作品でありながら、(恋愛面の描写は少ないものの)ラブストーリーとしても非常に魅力がある作品だと思います。




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